最近の話題をわかりやすく解説します。
コレステロール結晶について
コレステロールは、細胞の膜を作る重要な物質です。しかし、過剰になると血管の壁にたまり、あるいは血管の壁をもろくして心筋梗塞などの病気を起こす、おおむねこのような簡単な説明が考えられてきました。お粥のような物質ということで粥状動脈硬化(じゅくじょうどうみゃくこうか)と言われてきました。その成分を組織を顕微鏡で調べますと、空洞になったところがあって、それが昔からコレステロールの結晶といわれてきました。しかしそのはたらきはわかっておらず、意味のないものだと考えられてきました。最近免疫の分野で、いろいろな結晶が生まれ持った免疫(先天免疫)の原因となり、そこで炎症が起こるということがわかりました。すなわち、血管の壁にたまったコレステロール結晶に対して体を守るために攻撃をし、その炎症が病状悪化に関係することがわかってきました。空洞に見えていたのは、顕微鏡で調べるために薬品をかけるとコレステロール結晶が溶けてなくなってしまっていたのです。それで長年実物で見ることができなかったのです。我々は大動脈のその汚れから、コレステロール結晶を取り出すことに成功しました。実験で作られてきたコレステロール結晶とは全く形も違うことがわかりました。
図は偏光顕微鏡でコレステロール結晶を観察したものです。いろいろな形のものが重なっているように見えます。これは体内で結晶化する際に平行四辺形に厚みを持った、平行六面体のものがだんだんできていくためです。青やオレンジに見えるのは偏光をかけているためです。これは光学顕微鏡でみえます。赤い丸いのが赤血球で5μmの直径があります。